名探偵はもういない(霧舎巧)

2020/10/27

ネタバレあり 小説

名探偵はもういない(霧舎巧)

またもやクローズド・サークル。
東野圭吾先生の本と同時に図書館で借りていた小説となります。

図書館で借りた小説は「ある閉ざされた雪の山荘で」「名探偵はもういない」
の他に「GOSICK GREEN」もあったりするのですが、
GOSICKはシリーズものなので
前作のPINKと同じくTwitterでぷち感想程度にとどめたいと思います。

小説記事に需要があるかは分からないんですけども
自分で振り返る用が一番の目的なので、
私以外に楽しんで読んでくれている人がいるのでしたら
これ以上にない幸せです。

トリック重視なミステリー

内容の半分まで差し掛からないと事件が起こらなかったりするんですけど、
半分まで読んだ時点で「コイツ…死ぬだろうな」と死亡フラグを感知できたり
「コイツ…犯人だろうな」と予測できたりする(実際当たっていた)ので、
小説にもメタで書かれてある通り、犯人当てのために読むのはオススメしません。

犯人や叙述トリックで読者をあっと驚かせるよりは
張られた伏線をコツコツと繋いで事件に結びつかせ、
読者を納得させるスタイルなんだと思います。

この小説の表紙を開いたあと、目次の前に登場人物のページがあったりします。
ただ意地悪なことに表は空白で「作品を読みながら表を完成させるように」
と言ってきます。

何か意味があるんだろうなと察しながら読み進め、
実際に全て読み終えた素直な感想としては
「名前くらいは書いても良かったんじゃない?」と思えてこなくもないですが、
確かに主人公と思われる(木岬)の正体は驚き
…というよりはじんわり身に染みる良さがありました。
事件のトリックよりも木岬の正体が結構好きです。
おそらく1週目で読む木岬と2週目で読む木岬は印象が少し変わると思うんですよね。

前回の小説記事で散々と主張していた見取り図については、
今回は小説の途中(本編中)に掲載されています。
「今回は見取り図が無いのか」と落胆していた矢先の
不意打ちを食らいましたよ。

今回の見取り図もまあ、意味はあるんですけど
推理を解き明かした後もなお残る謎、それを解く鍵
という難易度高めな上に、
色々と伏線を組み合わせ、見取り図を照らし合わせ、
さらに少しこじつけないと分からないものなので、
分からなくて悔しいという感情はほとんどなかったです。

あとクローズド・サークルで期待していた
「次に誰が死ぬかも分からない恐怖」は無かったです。

「ある閉ざされた雪の山荘で」は全滅エンドも視野に入っていたので
多少のスリルはあったんですけど、こちらの作品は上で記述した通り、
死亡フラグがあった人が亡くなり、そして犯人が分かってしまうと
ある時点で「あ、もう大丈夫だな」と思えてきます。
(メタを言えば、ゲームとは違って小説は残りのページ数から盛り上がりの程度を
予測できてしまいます)

ラブロマンス要素の入ったハートフル・クローズド・サークルということで
気になる方は読んでみてはいかがでしょうか。(酷い紹介をみた)

ここから先はネタバレ

今回はちゃんと死者が出ています。
作中で亡くなったのは3名で、強請屋の琴沢、犯罪学者の木岬、従業員の福永です。

琴沢は真っ先にやられるだろうと踏んでいましたし、
木岬は驚くほど死亡フラグを構築していたので
むしろ死なずに活躍する姿を見たかったぜ、となる人物でした。
ですので主人公っぽい立ち位置だったのにもかかわらず死んでも納得できたのは、
フラグがあったからです。あと小説タイトルのせい。
福永に関しては事件前から犯人だと目星を付けていたので、
福永の自殺をもって一連の事件は終わったなと感じました。

琴沢の死亡現場にどんぶりが2つあった時点で
私は福永が犯人だと確信できたわけですが、
木岬の死が事故死だったのは想像していなかったです。

というのも私のイメージでは
木岬は何らかの理由(この理由は自力では分からなかったのでこのように表記)で
琴沢の部屋に入り、福永によって完璧に偽装された自殺を他殺によるものだと見抜き
琴沢の事件現場を他殺に見えるよう弄っているさなか
福永に見つかり始末された、みたいな想定をしていたので、

まさか木岬が琴沢の他殺を見抜けず、
自殺現場を他殺現場に偽装して、事件の挑戦状みたいなものを貼り終わった帰りに
大地震で足をとられ転落するなんて…
それを知った瞬間「嘘やろ!?」と一番のショックでしたね。
とんだミラクルボーイの木岬。

木岬って落ち着いていて冷静沈着かと思っていたんですが、
意外とパリピ要素が強いかもしれないです。
ミスリードしてくるし、読者にとっては厄介な人物でした。

あと木岬が亡くなったので、探偵役は誰になるかと思ったら
まさかの外国人&後動たち警察関係者タッグでした。
個人的には早芝を気に入っていたので早芝に探偵役をしてもらいたかったですかね。

まあ彼には木岬の正体の鍵となる人物なので、
探偵役まで引き受けたら他のキャラが霞むのかもしれません。

主人公は敬二

木岬研吾に焦点を当てた作品かと思いきや、
そういえばプロローグとエピローグは義弟の敬二の夢が語られているので
探偵役は別として、主人公は敬二な気がしました。
敬二のための物語というふうな。

そう考えると恋に目覚めた木岬が正気に戻り、
自分のせいで犯罪の道に進む義弟を救うため一肌脱いだ結果亡くなり、
その意志を継いだ探偵役の後動が敬二を更生させる話

と、あらすじをいざ振り返ってみるとハードカバーにしては
かなりポップな内容になっていませんかね?
私の説明のせいですかね?

クローズド・サークルとして紹介するには明るめな話でしたが
小説で純粋に楽しむ分には自分の好みなお話でした。

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