鴉(麻耶雄嵩)
閉鎖的な集落と特殊な舞台設定
読み終わったのは先週あたりです。
村の風景やら制度やらの設定が独特で
あと登場人物が多めで、読むのに時間がかかりましたよ…
その割にあまり理解できていないんですが、
今回も軽く備忘録的な感覚で記事にしました。
話が複雑で説明が難しくてですね、
あらすじを敢えて一言でまとめるなら
「珂允が弟の襾鈴の死の真相を探るために閉鎖的な村を訪れる話」になります。
誤解が生まれそうなので補足しますと、
弟は一時期失踪しており、その失踪先というのが例の村だと判明しています。
ただ弟はその後、失踪から戻ってきており
戻った矢先で何者かに殺害されるという話です。
視点は珂允だけではなく、橘花視点と櫻花視点もあるので
それぞれにドラマがあり群像劇っぽい形の小説になっています。
賛否両論な小説みたいですが、
因みに私がこの小説を全て読み終えたとき
理解して鳥肌、ではなく混沌と困惑が待ち受けておりました。
他の人のレビューも参考にしながら今回は記事を書きますが、
未だに消化できていない部分もあるので
「間違えていてもかまへんよ!」なネタバレokの方は
このまま進んでください。
色々語りたいことはあるんですけど今回は難しくて若干消化不良でして、
「叙述トリック」と「珂允の二重人格」の2点について感想したいと思います。
叙述トリック
冒頭でも説明しましたが、小説では3つの視点から成り立っています。
①珂允視点
②橘花視点
③櫻花視点
珂允には弟がおり、橘花には兄がおり、櫻花には弟がいる、
という兄弟設定になっています。
それで名前や話の構成のせいで
②視点の人物と③視点の人物が兄弟のように読みとれてしまうんですよね。
ところが終盤の③視点で、櫻花が弟を殺害する描写があるのです。
本来なら弟だと思われる橘花はそこで退場してしまうはずなのですが、
その後の①視点で橘花が登場しており
「…へ?」と、どういうことだ状態に陥りました。
視点ごとに時系列がごっちゃになっているのか、
それとも橘花を演じた櫻花が①視点には登場しているのか、とか。
あらゆる可能性を巡らせまして、色々と考えてしまいました。
で、よくよく読んでみると②(弟)ー③(兄)ではなく
①(兄:現在)=③(兄:回想)、つまり①と③は同一人物で
②は③と全く関係の無い赤の他人だったということが分かりました。
そうなると珂允の弟は随分と前に、
しかも子どもの頃に殺されていることになるのですが…。
なら失踪した弟は誰だったのか、殺された弟とは何だったのか、
そこが次の「珂允の二重人格」へと繋がるわけです。
珂允の二重人格
「弟が殺された」の表現なのですが、
おそらく珂允の中にいた弟の人格の状態で村へ行き
こちらに戻ってきたところで弟の人格を消した、
ということなのでしょう。
…でもちょっと無理がある気がするんですよね。
「二重人格で人が変わるようになる」だけなら分かるんですが
「見た目まで変わる」のは、弟人格が兄とは全く違うとは言え、
珂允自身が以前にも村へ行っているわけですから、
村の東と西でお世話になった場所が違うにしても
持統院はせめて気付くべきでしょうとは思います。
「叙述トリック」と「珂允の二重人格」の真相は私好みではあったんですけど、
筋が通らない部分もあって違和感を覚える内容でした。
それにこの叙述トリック、作中で起きた事件にほぼ関係無かった気が。
色のトリックだけでも充分成立しているものですから。
前回の麻耶先生の小説感想記事でも感じたことなんですが、
麻耶先生の作品は劇中の事件はあくまで酒の肴程度であって、
本当にやりたいことはまた別の謎で、それを読者に突きつけることなんじゃないかなと。
叙述トリックをするために劇中の事件を準備されているみたいな。
ただもしそうなら序盤の方でもう少し分かりやすい「違和感」を残してもらえると
珂允=櫻花の感動は凄かったんじゃないかなと思えるんです。
まあ私の頭が足りなかっただけかもしれませんけど。
麻耶先生の作品は「違和感」を感じ取ることが
楽しむためのポイントなんじゃないかなと今回感じました。
もう1冊くらい、リベンジで麻耶先生の本を読んでみたいですね。
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