粘膜人間(飴村行)
最初の50ページで本を閉じた
こちらの本はスプラッター小説の紹介で
よくオススメされてるのを見かけたので図書館で借りてきました。
一見、話は分かりやすいし読みやすいんですけど
序盤で既に「これは最後まで読んで大丈夫なんだろうか」
という不安に駆られて中断して2週間放置した末、
貸出期限を延長させてなんとか読んだ本です。
舞台背景は昭和初期っぽい雰囲気なんですが
河童が存在するファンタジー?です。
以下、ざっくりした序盤のあらすじです。
中学生の兄弟には小学生の末弟がいて、
その弟は体が異常に大きく中学生の兄達に横暴な態度を取っていました。
さらに弟は父親に対して重症を負わせるほどの事件を起こしてしまい、
弟に太刀打ちできない中学生の兄弟は
今度は自分たちが父親のような目に遭いかねないので
河童に弟の殺害を頼みます。
解説と選評から読み、本編を読み始めたんですけど
途中で読む気力が失せてしまいました。
一応最初に解説を読んでいるので
どういう方向性で読めば良いのかは分かりますが、
「何のためにこの小説を読めばいいんだろう」という
読む気力と目的を失った作品は久しぶりです。
ただ残虐描写は素晴らしく惨たらしく、
しばらく蕎麦を食べられないかもしれない程でした。
蕎麦の演出は凄いと言いますか、
現実でも処刑する前は食べ物を提供する慣習とかあったんですかね。
…無いか。
その他にも惨殺のバリエーションは沢山あるので好きな方は好きそうな作品です。
そのあたりは評価できると思います。
まあ、本好きでもオススメできない1冊になりますね。
ここから先はネタバレ
ストーリー的には面白い方だと思います。
中学生の利一と祐二が河童のモモ太に
利一と祐二の腹違いの弟である雷太を始末するように頼むんですけど、
殺害当日にモモ太は約束を破って
モモ太の弟であるジッ太とズッ太を犯行に差し向けます。
ところがどっこい、
ジッ太とズッ太は雷太に返り討ちに合い殺され、
結局のところ祐二が隙を狙って雷太の頭部へ
思いっきり斧を叩きつけて場を収めました。
利一と祐二は全て終わったと思い込み、
その場にあったジッ太、ズッ太、雷太の遺体を井戸へ放り投げます。
で、ここからが本番です。
その後、モモ太は現場に駆けつけ弟達を捜していると、
そこで最後に井戸に投げ込まれて一番上にいた雷太が反応します。
雷太は生きていたのです。
ロープで救出した雷太に弟達の臭いがついていると気付いたモモ太は
雷太に弟達の行方を尋ねますが、
斧によって頭をカチ割られて記憶喪失していた雷太は答えられません。
モモ太は雷太の記憶を取り戻せば
弟達がどこにいるのかのヒントが得られると考え、
行動を共にするのでした。
個人的に面白いところは、
モモ太の弟を殺した雷太が記憶喪失のまま
モモ太と一緒にいることの滑稽さです。
なのに、オチとしてモモ太にバレるところまでしか書いておらず、
モモ太と雷太が対峙してから以降を書かれていないのがモヤッとします。
ホラー系なら、後からゾワッとさせる意図以外の理由で
生存不確定はやめて欲しいかな、と思ったり。
清美もまたなんかモワっとする終わりでしたね。
祐二の遺体が回収されているということは清美も見つかってそうですが、
遺体を捨てた防空壕から脱出して逃げているかもしれませんし、
しれっと家に戻って少佐の遺体と一緒に住んでいるかもしれないですし(笑)
清美の描写をあれだけ入れておいて
脇役っぽいフェードアウトをしていったのが惜しい感じがしました。
ま、脇役ですけど。
とにかく報われるキャラが1人、1匹もいませんでした。
唯一平行線で終わったと思われるのがキチタロウという妖怪ですが、
河童に崇拝され、雷太の記憶を戻してあげて終わりましたから。
好感を持てるキャラが一切いないというのも逆に清々しいです。
考察は色々とありそうな小説ですが、
「雷太って”太”が付いているし半妖だったんじゃないか」みたいな
安っぽいことしか思いつかないです。
清美の幻覚に雷太が出た描写についても引っかかると言えばそうですね。
清美は雷太に追いかけられるんですけど、
その時の雷太は左足を怪我している状態で走っています。
確か、序盤で井戸に落とされたときは主に頭部と顔面の負傷だったので、
それ以外の怪我と考えると最後のモモ太とのシーンかなと。
モモ太に負傷しながらも勝ったあとの雷太の行動が
清美の幻覚に繋がる的な…。
それならぶつ切りエンドだったのも
清美の最期が分からないのも納得できます。
いや、矛盾してそうな気がするので、
これ以上の考察はやめときましょう。
感想記事からは伝わらないと思いますが、
自業自得のグロホラーでした。
河童だって、約束を破ったから計画が破綻して弟達を殺されていますし、
利一・祐二・父親だって、雷太の暴力の原因となっているはずなんですよ。
事実、雷太の記憶が喪失している間は、暴力性皆無だったので、
性格ではなく過去のトラウマが起因しているはずなんですよ。
感想は以上になりますが、しばらくスプラッター小説は控えます。
スプラッターは中々「好き」と思える小説を当てにくい感触があります。
面白い小説をやっぱり読みたいじゃないですか。
ってことで、今週も本を2冊借りたので、
小説感想記事はもう少し続きます。
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